「この絵、何かがおかしい…」
一枚の不気味な絵をきっかけに、点と点が線で繋がり、やがて恐るべき真実が浮かび上がるサイコ・スリラー『変な絵』。覆面作家・雨穴さんによる原作小説は発売当初から話題沸騰となり、コミカライズ版も多くの読者を震撼させています。
この記事では、あなたが気になっている『変な絵』の物語の核心に迫るネタバレを、章ごとに徹底解説します。
「あの絵に隠された本当の意味は?」
「ブログに綴られた夫婦の運命は?」
「すべての事件を操る真犯人の正体と、その狂気に満ちた動機とは?」
物語の全貌を知りたい方、読了後の考察を深めたい方は、ぜひこのまま読み進めてください。すべての謎が解けたとき、あなたもきっと言い知れぬ恐怖に包まれるはずです。
『変な絵』はどこまで読める?原作と漫画の最新情報
『変な絵』は、まず小説として発表され、その後に漫画化されました。現在の公開状況は以下の通りです。
- 原作(小説):2022年10月に双葉社より出版され、物語は完結しています。
- 漫画(コミカライズ版):作画・相羽紀行先生により「漫画アクション」で連載中。コミックスは2025年8月7日に第3巻が発売されました。
物語の結末まで一気に知りたい方は小説版を、絵が持つ不気味さをビジュアルでじっくり味わいたい方は漫画版を手に取ってみてはいかがでしょうか。
【章ごとネタバレ】『変な絵』の全貌をあらすじと共に徹底考察
ここからは、物語の核心に触れるネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
第一章:風に立つ女の絵|ブログと5枚の絵に隠されたダイイングメッセージ
物語は、オカルト好きの大学生・佐々木が、後輩の栗原から「七篠レン心の日記」という不気味なブログを紹介されるところから始まります。ブログには、七篠レンと妻ユキの穏やかな日常が綴られていましたが、そこに添えられた5枚の絵は、どれも奇妙で不穏な雰囲気を漂わせていました。
栗原は、この5枚の絵が重ね合わせることで意味を持つことに気づきます。
- 絵①〜③を重ねると:「老婆が妊婦の腹から赤子を取り出している」おぞましい絵に
- 絵④〜⑤を重ねると:「父と子が仲睦まじく手をつないで歩く」微笑ましい絵に
栗原は、これらの絵がユキが残したダイイングメッセージだと推測。ユキは過去に何らかの「罪」を犯し、その復讐として産婦人科で命を落としたのではないか、と。ブログの最後の更新日には「あなたの罪は分からないが、あなたを許すことはできない」という、謎めいた言葉が残されていました。
第二章:部屋を覆う、もやの絵|我が子を守る母の狂気
場面は変わり、2015年。シングルマザーの今野直美は、息子の優太と二人で暮らしていました。ある日、優太が描いた一枚の絵が、新たな恐怖の幕開けを告げます。それは、自宅が灰色の“もや”にすっぽりと覆われている絵でした。
この絵をきっかけに、直美は不審な男に尾行されていることに気づきます。日に日に強まる恐怖の中、優太が家から失踪。彼は霊園で発見され、「本当のお母さんはここにいる」と呟くのでした。その直後、例の不審者が家を訪ねてきます。直美は息子の身を守るため、男を包丁で刺殺してしまいます。
この時点では、我が子を守ろうとする母親の悲劇に見えますが、物語はまだ序盤に過ぎません。
第三章:美術教師 最後の絵|20年以上前の未解決事件
物語はさらに過去へ遡り、1992年。山中で美術教師・三浦義春が殺害される事件が発生します。現場には、彼が描いたと思われる一枚の山のスケッチが残されていました。事件は有力な手がかりがないまま迷宮入りとなります。
時が経ち、三浦の教え子だった岩田は、記者・熊井と共に事件の真相を追い始めます。しかし、真相に近づいた岩田もまた、三浦と同じ手口で殺害され、現場には同じように山の絵が残されていました。この20年以上前の未解決事件が、一体どう現代の物語と繋がるのでしょうか。
最終章:文鳥を守る樹の絵|すべての伏線が繋がる戦慄の結末
すべての事件を繋ぐ中心人物、それは第二章の母親・今野直美でした。
彼女こそが、美術教師・三浦義春の妻であり、第一章のブログ主・七篠レン(本名:三浦武司)の母親だったのです。
直美は11歳の時に実の母親を殺害したというおぞましい過去を持っていました。更生後、助産師として働き、三浦と結婚。息子・武司(レン)を授かり、幸せな家庭を築いているかに見えました。しかし、その母性は次第に歪んでいきます。
- ユキを殺した真犯人:直美だった。「息子の子供(孫)の母親に、自分がなりたい」という常軌を逸した嫉妬心から、嫁であるユキの出産時に手を下し、殺害したのです。ブログの「あなたの罪」とは、ユキではなく直美自身の過去を指していた可能性が浮上します。
- 優太の正体:直美がレンとユキから奪った赤ん坊でした。
- 美術教師殺害の真相:直美は夫・三浦が、自分の過去を知ったと思い込み殺害。真相を追っていた教え子の岩田も口封じのために殺害したのでした。
つまり、すべての悲劇は、直美の「守るためには手段を選ばない」という歪みきった母性から引き起こされていたのです。
エピローグでは、心理学者が一枚の絵に言及します。それは直美が描いた「文鳥を守る樹の絵」。一見、か弱い文鳥を大きな樹が守っている心温まる絵ですが、よく見ると、鳥を守る枝はどれも鋭く尖っています。
彼女の母性は、守るべき対象以外すべてを傷つける、凶器そのものだったのです。この最後の考察が、物語に深い余韻と底知れぬ恐怖を残して幕を閉じます。
『変な絵』最大の謎|登場人物の歪んだ心理と異常な母性の正体
『変な絵』の恐怖の根源は、ミステリーとしての巧妙なプロットだけでなく、登場人物、特に今野直美の異常心理にあります。
彼女の行動原理は一貫して「母性」です。しかし、その愛はあまりに自己中心的で排他的。息子への過干渉は嫁への嫉妬と殺意に変わり、自分の秘密を守るためには夫さえも手にかけます。
彼女にとって「家族」とは、自分の支配下にあり、理想通りに動く存在でなければならなかったのです。その理想から外れる者は、たとえ家族であっても「敵」とみなし、排除する。この狂気が、数十年にわたる悲劇を生み出しました。
9枚の絵が語る真実|伏線としての絵の役割
この物語において、「絵」は単なる小道具ではありません。登場人物の心理、隠されたメッセージ、そして事件の真相を指し示す、最重要のキーワードです。
- レンの5枚の絵:妻ユキの死の真相を告発するダイイングメッセージ
- 優太のもやの絵:直美による異常な監視と支配からのSOS
- 三浦の山の絵:殺害現場に残された、犯人に繋がる唯一の手がかり
- 直美の文鳥の絵:彼女の歪んだ母性の本質を象徴するメタファー
一つ一つの絵に込められた意味を理解したとき、バラバラだった事件が一つの凶悪な絵画として完成する構成は、まさに圧巻の一言です。
まとめ:あなたはどの絵に一番ゾッとしましたか?
『変な絵』のネタバレと考察をお届けしましたが、いかがでしたでしょうか。
一枚の絵から始まる謎が、過去の未解決事件と繋がり、やがて一人の女性の狂気的な母性に収束していく様は、読後もしばらく頭から離れないほどの衝撃を与えます。
文字で読むあらすじだけでは伝わりきらない、じっとりとした恐怖や、絵が持つ不気味な説得力は、ぜひ原作小説や漫画で体感してみてください。