薬屋のひとりごと小説版二巻のネタバレ。猫猫の両親は、すれ違いすぎた二人

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二巻の副題に「涙なしでは読めない」をつけるとしたら、それは猫猫の謎解きではなく、猫猫の両親の話のせいです。

一巻は「猫猫が後宮で謎を解く」という構造でした。二巻もその構造は続きますが、並行して大きな縦糸が動き始めます。猫猫のルーツ、つまり彼女がどこから来た人間なのかという話です。

フィクションにおいて「主人公の出自」は往々にしてドラマになります。しかし薬屋のひとりごとがうまいのは、その出自を「かわいそうな過去」として消費せず、猫猫自身が自分の生い立ちをあっけらかんと受け入れているところです。本人は傷ついていない。ただ、周りは大変だったのだということが、二巻を読むとわかります。

外廷へ、そして羅漢の登場

一巻の終わりで壬氏に買い戻された猫猫は、二巻では後宮から外廷(がいてい)に異動します。壬氏のお付として、より広い宮廷の世界で働くことになります。

外廷では新たな事件が次々と起きます。倉庫で小火(ぼや)が発生する、官僚が食中毒になる、腕利きの職人が変わった内容の遺言を残す。場所が後宮から外廷に変わっても、猫猫の周りでは謎が起きるし、猫猫はそれを解く。構造は変わりません。

変わったのは、ここで羅漢(ラカン)という人物が登場することです。

羅漢は軍師で、武官としての地位を持つ人物です。変人として有名で、周囲の人間にとって扱いにくい存在です。しかしこの人が猫猫に対して、ただならぬ執着を見せます。

猫猫の態度が、普段と少し違う。羅漢に対してだけ、明らかに距離を取ろうとしている。これが読者への引きになります。「この二人は何の関係なのか」という疑問です。

羅漢の正体と、猫猫との関係

答えは明かされます。

羅漢は猫猫の実の父親です。

猫猫が花街で育ったのは、正確には「養父・羅門のもとで育った」からです。実の父親が別にいた。それが羅漢でした。

では、なぜ猫猫は父親のもとではなく花街で育ったのか。ここで二巻最大のエピソード、羅漢と鳳仙(フォンシェン)の話が始まります。

羅漢と鳳仙:17年前のすれ違い

鳳仙は、かつて花街にいた妓女です。非常に美しく、聡明な女性でした。

羅漢は変人で、人の顔を認識するのが著しく苦手です(現代でいえば相貌失認に近い特性を持っています)。人の顔がわからないために、人間関係を構築しにくい。そんな羅漢が、鳳仙とは碁や将棋を通じて向き合うことができた。盤を挟んで対局する中で、二人は互いの才能を認め、惹かれ合っていきます。

ここで重要なのは、羅漢にとって鳳仙との関係は「碁仲間」から「恋人」へと変わった本物の感情だったということです。変人と言われる人間が、初めて心を開いた相手でした。

しかし羅漢は仕事で都を三年間離れることになります。

離れた間、羅漢からの連絡は途絶えました。事情があったのか、伝わらなかったのか。鳳仙の側からは「捨てられた」としか映りませんでした。

鳳仙は絶望し、自らの小指を切り落とし、その指と手紙を羅漢の部屋に残します。

この行動が何を意味するか。指を落とすことは、花街で特別な意味を持ちます。二度と男を愛さないという、自分に課した誓いです。

羅漢が戻ってきたとき、鳳仙はすでに別の状況にいました。二人はすれ違ったまま、その後の時間が流れていきます。

猫猫はこの話を知っていたのか

読者が気になるのは「猫猫はこの話をどこまで知っているのか」です。

猫猫は花街育ちです。鳳仙のことを知っていた可能性は高い。羅漢が自分の父親であることを、なんとなく察していた可能性もあります。

しかし猫猫は直接そのことを語りません。ただ、羅漢に対してだけ距離を取る。そのことが、猫猫の内側に何かあることを読者に伝えます。

言葉にしない感情が、行動ににじみ出る。これが二巻で見えてくる猫猫の人間らしさです。

二巻の謎解きパートについて

縦糸の羅漢・鳳仙の話が印象的すぎて後回しになりがちですが、二巻の謎解きパートも充実しています。

官僚の食中毒は、原因となった食材の特定と「誰がなぜそれを準備したか」という動機の解明が絡みます。変人・羅漢との関係で猫猫が普段と違うテンションで動く場面もあり、感情が少し揺れている猫猫を見ることができます。

普段は合理的で感情に動かされない猫猫が、特定の人物に対してだけ感情的になる。その「特定の人物」が羅漢であり、壬氏であり、それぞれ別の理由で猫猫の中に何かを起こしています。

二巻全体を通じて言えること

一巻が「猫猫というキャラクターの紹介」なら、二巻は「猫猫の背景の掘り下げ」です。

猫猫は花街育ちで、薬師の養父に育てられた。実の父親がいて、実の母親がいた。その親たちの間に悲劇があった。そのことを猫猫は知っているか知っていないかわからないけれど、何かを感じている。

「かわいそうな生い立ち」としてドラマ化されない分、読者の想像が入る余地があります。猫猫が何を感じているのかを、行間から読み取る楽しさがある。

羅漢と鳳仙のすれ違いは、単純な悲劇ではありません。どちらかが悪いわけではなく、情報が伝わらなかった。タイミングが悪かった。それだけで人生が大きく変わった。

そういう話は、なんとなく心に残ります。

まとめ

小説版二巻のネタバレをまとめると、以下のとおりです。

  1. 猫猫が後宮から外廷に異動し、壬氏のお付として働く
  2. 変人軍師・羅漢が登場し、猫猫に対して特別な執着を見せる
  3. 羅漢が猫猫の実の父親であることが明らかになる
  4. 17年前の羅漢と鳳仙(猫猫の実母)のすれ違いと悲恋が描かれる
  5. 外廷での複数の謎(食中毒・小火など)を猫猫が解決する

一巻で「面白い」と思った方は、二巻で「泣けた」になる可能性があります。そういう二巻です。