『チェンソーマン』や『ルックバック』で世界中を熱狂させた奇才・藤本タツキ。
彼が漫画家としてデビューする前、17歳から26歳という多感な時期に描いた傑作短編群が、ついにアニメーションとして動き出しました。
2025年10月の劇場限定上映を経て、現在はPrime Videoにて世界独占配信中のアニメ『藤本タツキ 17-26』。SNSでも「解像度が高すぎる」「原点の時点で完成されている」と大きな話題を呼んでいます。
この記事では、アニメ化された全8作品のあらすじと見どころ、そして原作漫画との比較ポイントを徹底解説します。まだ観ていない方は視聴ガイドとして、観終わった方は考察の材料としてお楽しみください。
藤本タツキ短編集 17-26の作品概要
本作は、藤本タツキ先生が初期に発表した短編漫画を原作とするアニメアンソロジーです。
タイトルの「17-26」は、彼がこれらの作品を描いた年齢(17歳〜26歳)を指しています。若き日の衝動、実験的な演出、そして後の大ヒット作に通ずる「映画的な視点」が詰まった作品群です。
原作コミックス情報
原作は以下の2冊の短編集に分かれて収録されています。
- 『藤本タツキ短編集 17-21』:初期の荒削りながらも強烈なエネルギーを持つ作品群。
- 『藤本タツキ短編集 22-26』:物語構成や演出がより洗練され、現在の作風に近づいた作品群。
今回のアニメ化プロジェクトでは、これら2冊から選りすぐりの全8作品が映像化されました。
アニメ化情報:配信サイトと制作体制
2025年12月現在、アニメ『藤本タツキ 17-26』を視聴できるのは以下のプラットフォームのみです。
Prime Videoでの世界独占配信
本作はAmazon Prime Videoの独占配信タイトルです。他の配信サービス(NetflixやU-NEXTなど)では視聴できませんのでご注意ください。
複数の制作スタジオと監督が各話を担当する「アンソロジー形式」を採用しており、作品ごとにガラリと変わる絵柄や演出も見どころの一つです。MAPPAをはじめとする実力派スタジオが結集し、藤本タツキワールドを鮮烈に映像化しています。
>> Prime Videoで『藤本タツキ 17-26』を視聴する
【作品別】収録全8作のあらすじ・見どころ
ここからは、アニメに収録された全8エピソードについて、あらすじと見どころを紹介します。
※核心に触れるネタバレは「詳細を見る」ボタンの中に隠していますが、未視聴の方はご注意ください。
1. 庭には二羽ニワトリがいた。
あらすじ:
宇宙人の侵略により人類が滅亡寸前の世界。生き残ったのは、学校の校庭にいた主人公の少年と、ニワトリの着ぐるみを着た「ニワトリ先生」だけだった。二人は絶望的な状況下で奇妙な共同生活を始める。
見どころ:
藤本タツキ先生が17歳で描いた初めての投稿作。「17歳でこれを描いたのか」と驚愕するシュールさと、極限状態でのドライな人間関係が魅力です。
ネタバレ解説を読む
実はニワトリ先生の正体は、着ぐるみを着たまま死んだ先生ではなく、着ぐるみが意志を持った存在(あるいは少年の幻覚とも取れる描写)であることが示唆されます。ラストは二人でボロボロになりながらも生きることを選びますが、その背景には「食べる・食べられる」という命のサイクルが横たわっています。初期衝動が詰まった一作。
2. 佐々木くんが銃弾止めた
あらすじ:
佐々木くんは、想いを寄せる川口先生を守るためなら何でもする男子高校生。ある日、教室に銃を持った男が押し入ってくる。佐々木くんは「先生を守る」という一心だけで、常識を超えた行動に出る。
見どころ:
タイトルの通り、本当に銃弾を止めます。恋の力は物理法則をも凌駕するという、勢い任せのギャグと狂気が同居した作品。
ネタバレ解説を読む
佐々木くんは未来から来た自分自身と共に、先生を守るために銃弾を止め続けます。物語のオチとして「先生は実はカツラだった」等のしょうもない秘密も暴露されますが、それすらも愛で包み込む佐々木くんの異常性が際立ちます。「神」や「宇宙飛行士」といった後年のモチーフもちらりと見えます。
3. 恋は盲目
あらすじ:
生徒会長に告白しようとする少年。しかし、彼が告白しようとするその瞬間、周囲では強盗、隕石落下、巨大生物の襲来など、ありえないトラブルが次々と発生する。それでも彼は「恋は盲目」状態で告白を続ける。
見どころ:
背景で世界が終わるような惨劇が起きているのに、主人公には「好きな子」しか見えていない対比が最高にコミカル。アニメ版の音響演出により、カオス具合が倍増しています。
ネタバレ解説を読む
最終的に彼はあらゆる災厄を無視(あるいは無意識に回避)して告白を成功させます。ヒロインもまた、そんな彼の異常なまでの集中力に惹かれたのか、あるいは状況のカオスさに流されたのかOKを出します。タイトルの意味を物理的に表現した怪作。
4. シカク
あらすじ:
依頼達成率100%の殺し屋少女「シカク」。彼女のターゲットは、不死身の吸血鬼だった。何度殺しても死なない男と、任務を遂行したい少女。奇妙な鬼ごっこの果てに、二人の関係は意外な方向へ転がる。
見どころ:
殺伐とした設定から始まる、歪んだラブコメディ。吸血鬼のキャラクター造形に『チェンソーマン』のデンジのような「どこか抜けた不死身キャラ」の原形が見られます。
ネタバレ解説を読む
吸血鬼は死にたがっているようで、実は寂しがり屋。シカクちゃんもまた、殺し屋としてのアイデンティティ以外に居場所がない少女でした。最終的にシカクはターゲットを殺すことを諦め、彼と共に生きる(監視し続ける)ことを選びます。「殺し愛」の変則的なハッピーエンド。
5. 人魚ラプソディ
あらすじ:
海中のピアノを弾くことが好きな少年と、その音色に惹かれた人魚の物語。人間と人魚、住む世界が違う二人の交流を、美しい音楽と共に描く。
見どころ:
藤本作品の中では珍しく、直接的な暴力描写が少なく「リリカルで優しい」作品。アニメ版ではピアノの旋律と海中の映像美が際立っています。
ネタバレ解説を読む
人魚は人間に捕まり見世物にされそうになりますが、少年は彼女を逃します。しかし、それは単なる自己犠牲ではなく、彼自身も「地上の窮屈さ」から解放されたかったから。ラストシーン、海中でピアノを弾く少年の姿は、現実逃避と芸術への没頭が美しく融合しています。
6. 目が覚めたら女の子になっていた病
あらすじ:
ある日突然、女性の体になってしまう奇病にかかった少年。体は女、心は男。性の揺らぎに戸惑いながらも、彼は以前から好きだった女子との関係を模索する。
見どころ:
ジェンダーやアイデンティティという重いテーマを扱いつつ、藤本タツキらしい軽妙な会話劇で進みます。思春期の不安定な自意識が生々しく描かれています。
ネタバレ解説を読む
主人公は最終的に「体は女のままでも、中身は自分である」ことを受け入れ始めます。性別の壁を超えて、人間同士として心を通わせるラストは、非常に現代的で繊細な読後感を残します。
7. 予言のナユタ
あらすじ:
「世界を滅ぼす」と予言された角の生えた少女・ナユタと、彼女を守り続ける兄。周囲から忌み嫌われ、差別されながらも、兄は妹への愛を貫こうとする。
見どころ:
『チェンソーマン』のナユタ(支配の悪魔)の原型とも言えるキャラクターが登場します。理不尽な暴力と言葉の通じない妹に対する兄の献身は、後の『ファイアパンチ』にも通じるテーマです。
ネタバレ解説を読む
ナユタは魔法で人々を殺傷する力を持っていますが、兄の言葉だけは理解します。兄は妹の凶暴性も含めて彼女を愛し、世界を敵に回しても二人で生きていく覚悟を決めます。残酷な世界で「家族」だけが唯一の救いであるという、藤本作品の核となるテーマが強く出ています。
8. 妹の姉
あらすじ:
絵画教室に通う姉妹。姉は努力家だが、妹は天才的な才能を持っていた。才能への嫉妬、姉としてのプライド、そして絵を描くことへの情熱。複雑な感情が交錯する。
見どころ:
『ルックバック』の原型とも評される作品。絵を描く人間の業と、姉妹の愛憎入り混じる関係性がヒリヒリするほどリアルに描かれています。
ネタバレ解説を読む
姉は妹の才能に絶望し筆を折ろうとしますが、ある出来事をきっかけに「自分が妹にとっての目標であった」ことを知ります。そして再びキャンバスに向かう。創作の苦しみと喜び、そして他者との比較から抜け出して「描く」ことへ回帰するラストは感動的です。
どこに注目すると面白い?鑑賞の深掘りポイント
ただ漫然と観るだけではもったいない!『藤本タツキ短編集 17-26』をより深く楽しむための3つの視点を提案します。
1. 「繰り返し現れるモチーフ」を探す
全編を通して、藤本作品には特定のモチーフが繰り返し登場します。
- 「支配」と「被支配」の関係(ナユタ、シカク)
- 理不尽な暴力による日常の崩壊(恋は盲目、庭には二羽ニワトリがいた。)
- 映画館や映画への言及
これらが初期作品からすでに存在していたことに気づくと、作家としての一貫した美学に感動すら覚えます。
2. アニメならではの「音」と「間」
漫画では読者のペースで進む「コマの間」が、アニメでは監督の解釈によって固定されます。特に「恋は盲目」のテンポ感や、「人魚ラプソディ」の音楽演出は、アニメ化によって情緒が何倍にも増幅されています。
3. 原作コミックとの比較
アニメを観た後に原作を読むと、「あの演出はアニメオリジナルだったのか!」「漫画のここの表情、アニメだとこう解釈したのか」という発見があります。
特に初期作品(17-21収録)の荒削りな線のタッチは、アニメの綺麗な映像とはまた違った「迫力」があります。
視聴・購入ガイド
最後に、本作を楽しむための最適なステップをご紹介します。
STEP 1:まずはPrime Videoでアニメを観る
映像と音の洪水を浴びて、藤本タツキワールドに没入してください。
>> Prime Videoで『藤本タツキ 17-26』を視聴する
STEP 2:原作で「原点の熱量」を確かめる
アニメで気になったエピソードは、ぜひ原作漫画でも読んでみてください。特に『藤本タツキ短編集 17-21』には、今回紹介した「庭には二羽ニワトリがいた。」から「シカク」までの初期衝動が詰まった作品が多く収録されています。
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まとめ
『藤本タツキ短編集 17-26』は、単なる過去作の寄せ集めではありません。現在の漫画界を牽引するトップランナーが、どのような変遷を経て「怪物」になったのかを目撃できるドキュメンタリーのような作品群です。
アニメから入るもよし、原作から入るもよし。ぜひこの機会に、藤本タツキの脳内を覗いてみてください。
