※当記事は、萩尾望都先生の漫画『メッセージ』の結末を含むネタバレを徹底的に解説しています。未読の方はご注意ください。
少女漫画の神様・萩尾望都先生が描く、時を超えて紡がれる珠玉の短編集『メッセージ』。
「ここではない★どこか」シリーズの一作としても知られる本作は、詩的で哲学的な物語が詰まっており、多くの読者の心を掴んで離しません。
この記事では、そんな短編集『メッセージ』に収録されている全12編の物語について、あらすじから結末まで、その魅力を余すところなくお届けします。
この記事を読めば、『メッセージ』の世界観や各短編の繋がり、そして物語に込められた深いテーマをより一層理解できるはずです。それでは、時を超える言葉の旅へとご案内します。
漫画『メッセージ』の作品基本情報
まずは、本作の基本情報をご紹介します。
- タイトル:メッセージ
- 作者:萩尾望都
- ジャンル:女性マンガ、ファンタジー、SF
- 配信状況:電子書籍で配信中(1巻完結)
コミックシーモアをはじめとする電子書籍ストアで、いつでも読むことが可能です。
あなたが探しているのは漫画?それとも映画?
「メッセージ」と検索すると、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF映画『メッセージ』(原題: Arrival)に関する情報が多く表示されます。こちらの映画は、宇宙人とのコンタクトを描いた壮大な物語で、非常に評価の高い作品です。
しかし、当記事で解説するのは、漫画家・萩尾望都先生による短編集『メッセージ』です。
もしあなたが萩尾望都先生の漫画について知りたいのであれば、このまま読み進めてください。時と場所を超えて、人々の心に届けられる「言葉」の物語があなたを待っています。
【収録順】全12短編のネタバレあらすじ・結末解説
それでは、コミックシーモアの収録順に沿って、全12編の物語を1話ずつ丁寧に解説していきます。それぞれの物語が持つ独自の魅力と、作品全体を流れるテーマを感じ取ってみてください。
メッセージ
物語は、自らの命を絶とうとする少女の前に、黒いマントの男が現れる場面から始まります。男は彼女にただ一言、「あなたを愛しています」と告げるのです。その言葉は、絶望の淵にいた少女の心を救う「メッセージ」となりました。男は時空を超え、歴史上の様々な人物の前にも現れますが、彼の言葉は常に同じ。たった一言のシンプルな愛の言葉が、どれほどの力を持つのか。その普遍的なテーマが、読者の胸に深く突き刺さる表題作です。
貴婦人
慈善活動に身を捧げ、「すべての人を愛したい」と願う信仰深い貴婦人。彼女のもとにも、あの黒いマントの男が現れます。彼は貴婦人の気高い博愛精神を愛したいと願いますが、彼女の心には、受け入れがたい存在に対する無意識の「恐れ」と「排除」の感情が潜んでいました。本作は、博愛と偽善の境界線を鋭く描き出し、人が持つ愛の限界と矛盾を問いかける、深く考えさせられる一編です。
オイディプス
ギリシャ悲劇の代表格である「オイディプス王」の伝説をモチーフにした物語。父を殺し母を娶るという神託から逃れようとしながらも、抗うことのできない運命の渦に巻き込まれていくオイディプスの悲劇が描かれます。逃れられない宿命と、それでも何かを選び取ろうとする人間の意志がぶつかり合う様は、読む者に強烈な印象を残します。続く『スフィンクス』と対をなす作品です。
スフィンクス
『オイディプス』から続く、ギリシャ悲劇を題材とした物語。王の死の謎、スフィンクスの問いかけ、そして神託がもたらす破局。古代の神話が持つ重厚な空気が、萩尾望都先生の繊細な筆致で見事に再現されています。シリーズ全体に流れる神話的なモチーフを象徴する一編であり、運命の残酷さと人間の尊厳が描かれています。
花嫁
舞台は中世ヨーロッパ。フランス王女カトリーヌが、政略結婚のためイングランド王へ嫁ぐまでの心の軌跡を描いた歴史ドラマです。占い師から告げられた未来に怯えながらも、自らの運命を受け入れ、王女としての覚悟を決めていく姿が印象的。歴史の大きな流れの中で、一人の少女が抱く不安と決意が、痛いほど伝わってきます。
海の青
舞台は現代の日本へ。大学生の浦島舞と、ミステリアスな同級生・天草夜羽根たちの青春が描かれます。自分を人魚姫になぞらえ、伝えられない想いに悩む舞。きらめく海の青さと、若者たちの揺れ動く心の様が重なり合い、切なくも美しい物語を紡ぎます。誰もが経験するであろう、片想いのもどかしさや甘酸っぱさが詰まった一編です。
水玉
こちらも浦島舞たちが登場する、日常を切り取った一編。落ち込んだり、元気を取り戻したり、くるくると変わる主人公の心情が、ファッションの「水玉模様」というモチーフを通して詩的に表現されます。コミカルなタッチで描かれるキャラクターたちのやり取りが微笑ましく、読後には心がふわりと軽くなるような、チャーミングな作品です。
シャンプー
浦島舞が執筆する小説の世界と、彼女たちの現実が交錯するエピソード。舞と夜羽根の関係性にも少しずつ変化が見られます。登場人物たちの間で生じる小さな誤解や、それを通じて成長していく姿が丁寧に描かれています。青春時代の複雑な人間関係が、爽やかなシャンプーの香りのように描かれた物語です。
百合もバラも
生方正臣という男性とその家族をめぐる、静かな家族ドラマ。妻の妊娠をきっかけに、家族の中に潜んでいた葛藤やすれ違いが浮かび上がります。決して派手ではありませんが、家族という共同体の中で移ろう時間や、それぞれの登場人物が下す決断が、リアルな手触りをもって描かれています。当たり前の日常にある愛おしさを再確認させてくれる一編です。
海と真珠
再び浦島舞と夜羽根を中心とした物語。これまでの短編で描かれてきた彼らの関係に、一つの答えが示される重要なエピソードです。タイトルの「海」と「真珠」が象徴するように、舞の内面で育まれた想いが、ついに形となって現れます。青春の終わりと新たな始まりを感じさせる、切なくも希望に満ちた結末は、シリーズのファンならずとも必見です。
夜の河を渡る
作家が、自らが生み出したキャラクターと対峙するという、メタフィクション的な構造を持つ異色作。創作活動における苦悩や迷いが、「夜の河を渡る」という幻想的なイメージで表現されます。物語を創り出すことの孤独と喜びが描かれ、作者である萩尾望都先生自身の創作への想いが垣間見えるような、非常に興味深い一編です。
しまうまのQ&A
短編集の最後を飾るのは、ユーモアあふれる掌編(しょうへん)。「なぜシマウマは白黒なの?」といった素朴な問いに、哲学的なようでどこか可笑しい答えが返ってくるQ&A形式の物語です。これまで紡がれてきた重厚なテーマや切ない物語の後に、ふっと肩の力が抜けるような軽やかな読後感を残してくれます。この短編集が持つ多様な魅力を象徴するような、素敵な締めくくりです。
『メッセージ』全体のテーマと読みどころ
この短編集は、表題作『メッセージ』に登場する黒マントの男が時空を超えて様々な物語に顔を出す「ここではない★どこか」シリーズに属しています。
全編を通して流れるテーマは、「言葉の力」「運命」「愛の形」です。
時代も場所も異なる人々が、誰かから受け取った「メッセージ」によって救われたり、あるいは運命に翻弄されたりします。ギリシャ神話のような壮大な悲劇から、現代の大学生の淡い恋物語まで、振れ幅の大きい物語群でありながら、どこか一本の線で繋がっているような不思議な読書体験ができます。
萩尾望都先生ならではの詩的なセリフ回しと、人間の内面を深くえぐる洞察力、そして美しい作画が一体となり、読む者の魂を揺さぶる傑作短編集と言えるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 映画『メッセージ』とは関係ありますか?
A. 全く関係ありません。映画はテッド・チャンのSF小説『あなたの人生の物語』を原作としており、萩尾望都先生の漫画とは別の作品です。
Q2. 漫画『メッセージ』は何巻までありますか?
A. 全1巻で完結しています。この1冊に、今回ご紹介した12編の物語がすべて収録されています。
Q3. どの話から読んでも楽しめますか?
A. はい、各話独立した短編なので、どこから読んでも楽しめます。しかし、「浦島舞」シリーズのように連続性のある物語も含まれているため、収録順に読み進めることで、より深く世界観を味わうことができます。
ネタバレを読んで気になった方は、ぜひ原作を
ここまで、萩尾望都先生の短編集『メッセージ』の全貌をネタバレありで解説してきました。
あらすじや結末を知った上で読むことで、キャラクターの細かな表情やセリフに込められた意味、伏線などに気づきやすくなり、新たな発見があるはずです。
文字だけでは伝えきれない、萩尾望都先生が描く絵の力、詩的な空気感を、ぜひ原作で体験してみてください。電子書籍なら、いつでもどこでも、この深遠な物語の世界に浸ることができます。
国内最大級の品揃えを誇るコミックシーモアでは、お得なクーポンやキャンペーンも充実しています。ぜひこの機会にチェックしてみてください。
まとめ
今回は、萩尾望都先生の傑作短編集『メッセージ』のネタバレ解説をお届けしました。
時代や文化を超えて、人々の心に届けられる「メッセージ」の重みと温かさを描いた本作は、きっとあなたの心にも忘れられない何かを残してくれるはずです。
この記事が、あなたが作品の魅力を再発見するきっかけになれば幸いです。ぜひ、ご自身の目で物語の結末を確かめてみてください。
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