【注意】この記事は、今村夏子先生の小説『星の子』の結末を含む重大なネタバレを解説しています。未読の方はご注意ください。
今村夏子先生が描く、静かで、しかし心を深く揺さぶる物語『星の子』。ある家族の「信じる」という行為が、一人の少女の目にどのように映るのか。その繊細な筆致は、多くの読者の心を掴んで離しません。
この記事では、2020年に芦田愛菜さん主演で映画化もされた話題作『星の子』のあらすじから結末までを、物語の時系列に沿って詳しくネタバレ解説します。読み終えた後の考察や、映画版との違いにも触れていきますので、作品をより深く味わいたい方はぜひ最後までお付き合いください。
この記事の要点(ネタバレの有無・注意)
本記事は『星の子』の核心に触れる完全ネタバレ記事です。物語の導入から衝撃のラストシーンまで、全ての展開を解説しています。
- 作品の結末を知りたい方
- 映画を観て原作のストーリーが気になった方
- 一度読んだが、他の人の解釈や考察を知りたい方
上記の方々におすすめの内容となっています。まだ作品を読んでおらず、自分の力で物語を体験したい方は、先に原作をお読みになることを強く推奨します。
作品概要
『星の子』は、第157回芥川賞候補、第39回野間文芸新人賞を受賞した今村夏子先生による中編小説です。その独特の世界観と静かな筆致が高く評価されています。
- 著者:今村夏子
- 出版社:朝日新聞出版
- 刊行年月:2019年12月(朝日文庫版)
- 受賞歴:第39回野間文芸新人賞 受賞
2025年現在も多くの書店で平積みされ、電子書籍サイトでも常にランキング上位に入るなど、その人気は衰えることを知りません。
登場人物一覧
物語は、主人公ちひろの視点を中心に進みます。彼女を取り巻く主要な登場人物を見ていきましょう。
- 林ちひろ:本作の主人公で語り手。中学3年生の少女。未熟児で生まれ体が弱かったが、ある水を飲んだことで健康になったと両親から聞かされている。両親の深い愛情を受けながらも、自分の家族が「普通」ではないことに気づき始める。
- ちひろの両親:娘であるちひろを心から愛している。ちひろの病気を治したという「水」をきっかけに、ある新興宗教に深く傾倒していく。教団の教えを第一に考え、その生活スタイルは世間から見ると少し風変わり。
- まーちゃん:ちひろの姉。両親の信仰に反発し、家を出て一人暮らしをしている。ちひろにとっては、外の世界と家族とを繋ぐ存在。
- 南先生:ちひろが好意を寄せる、新任のハンサムな社会科教師。彼の存在が、ちひろの世界に新たな風を吹き込む。
あらすじ(時系列で順を追って)
ここからは、『星の子』の物語を「序盤」「中盤」「終盤」に分けて、結末まで詳しく解説していきます。
序盤:ちひろの誕生と両親の入信
物語の主人公・林ちひろは、生まれたときから体が弱く、生後半年で皮膚の病気を患います。様々な治療法を試しても効果はなく、憔悴しきった両親。そんなとき、父の同僚から「金星のめぐみ」と呼ばれる不思議な水をもらいます。藁にもすがる思いでちひろにその水を飲ませ、体に塗ると、病気は嘘のように治っていきました。
この出来事をきっかけに、両親はこの水を頒布する宗教団体に深くのめり込んでいきます。家には教団の祭壇が置かれ、食事の前には祈りを捧げる。両親にとって、この信仰は愛する娘を救ってくれた「絶対的な善」であり、ちひろ自身も、両親からの深い愛情を感じながら、その特殊な環境を当たり前のものとして受け入れて成長していきます。
中盤:日常に溶け込む信仰と歪み
中学3年生になったちひろ。彼女の日常には、常に両親の信仰が影を落とします。学校の給食で出される牛乳を「良くないもの」として飲まないこと、修学旅行のお土産選びで教団の教えを気にする両親の姿。周囲の友人たちとの些細なズレは、次第にちひろの中で「私たちの家は、少しおかしいのかもしれない」という小さな疑念を育てていきます。
そんな中、ちひろは新任の南先生に淡い恋心を抱きます。しかし、両親は南先生の写真を勝手に持ち出し、教団の指導者に見せて「相性」を占ってもらう始末。娘を想うがゆえの行動は、ちひろの心を静かに、しかし確実に傷つけていくのでした。愛情と支配の境界線が曖昧な家庭で、ちひろの世界は少しずつ揺らぎ始めます。
終盤:ちひろの選択と静かなラスト
物語は、ある事件をきっかけに大きく動きます。教団に関連するトラブルが家族に降りかかり、これまで信じてきたものが絶対ではない可能性を突きつけられます。姉のまーちゃんは家を飛び出し、家族は崩壊寸前に。ちひろは、両親が信じる世界と、自分が生きる現実の世界との間で、大きな選択を迫られます。
そして訪れるラストシーン。物語は、善悪や正解を明確に提示しません。ただ、そこには、全てを受け入れたかのような、あるいは新たな一歩を踏み出そうとするちひろの姿があります。家族が再び集い、夜空を見上げる最後の場面は、決して単純なハッピーエンドではありません。しかし、そこには確かな希望の光と、家族というものの複雑で切ない絆が描かれています。この静かな余韻こそが、『星の子』が多くの読者の心を捉える最大の魅力と言えるでしょう。
ラストの解釈・考察
『星の子』の結末は、読者に様々な解釈を委ねる形で幕を閉じます。一体あのラストシーンは何を意味していたのでしょうか。
- 「受容」と「自立」の物語:ちひろは両親の信仰を否定も肯定もせず、ただ「そういうもの」として受け入れた上で、自分の人生を歩み始めることを決意した、という解釈ができます。これは、親からの精神的な自立を描いたものと捉えられます。
- 「信じること」の多面性:この物語は、何が正しくて何が間違っているかを問いません。両親にとっては「真実」であり「愛」であった信仰。その形が歪んで見えても、根底にある想いは本物だったのかもしれません。ラストシーンは、その複雑さを丸ごと抱きしめるような、静かな優しさに満ちています。
今村夏子先生特有の、淡々とした筆致で日常の違和感を積み重ねていくスタイルが、この多角的な解釈を可能にしています。読後、誰かと語り合いたくなる、そんな深い余韻が残る作品です。
映画(2020年実写化)との違い
2020年に公開された実写映画版『星の子』(主演:芦田愛菜)も非常に高い評価を得ました。原作の持つ空気感を大切にしながらも、映像ならではの表現が光ります。
- 視覚的なインパクト:教団の儀式の様子や、ちひろの暮らす家の少し奇妙な雰囲気が、映像によってよりリアルに伝わってきます。
- 感情の機微の表現:芦田愛菜さんをはじめとする俳優陣の繊細な演技が、原作の行間に込められたちひろの葛藤や喜び、悲しみを鮮やかに描き出しています。
- 物語の圧縮と再構成:映画という限られた時間の中に物語を収めるため、一部のエピソードは省略されたり、原作とは少し異なる形で描かれたりしています。
映画を観て興味を持った方は、ぜひ原作を読んでみてください。ちひろの細やかな内面描写や、映画では描ききれなかった日常のディテールに触れることで、物語の世界がさらに深く、豊かに広がっていくはずです。
よくあるQ&A
- Q. 結末はハッピーエンドですか?バッドエンドですか?
- A. どちらとも断定できない、余韻を残す終わり方です。主人公ちひろが自分の足で未来へ歩み出す「希望」を感じさせる一方、家族が抱える問題が完全に解決したわけではありません。読者の解釈によって受け取り方が変わる、奥深い結末と言えます。
- Q. 映画と原作、どちらを先に観る(読む)のがおすすめ?
- A. 原作(小説)が先です。原作は2017年に発表され、映画はそれを基に2020年に制作されました。先に原作でちひろの心情を深く味わってから映画を観ると、映像表現の意図や俳優の演技の素晴らしさをより一層楽しめるでしょう。
原作『星の子』を今すぐ読む方法
『星の子』の静かで美しい世界に、今すぐ触れてみませんか?ネタバレを読んで物語の結末を知った今だからこそ、今村夏子先生が紡ぐ言葉の一つひとつが、より深く心に響くはずです。
電子書籍なら、スマホやタブレットでいつでもどこでも、購入してすぐに読み始めることができます。特に国内最大級の品揃えを誇るコミックシーモアでは、お得なクーポンやキャンペーンも充実しています。
ちひろが最後に見た星空の意味を、ぜひあなた自身の目で確かめてみてください。
まとめ
この記事では、今村夏子先生の小説『星の子』のあらすじから結末までを、ネタバレありで徹底解説しました。
特殊な環境で育った少女の視点を通して、「家族の愛」「信じること」「普通とは何か」といった普遍的なテーマを問いかける本作。その静かな衝撃は、あなたの心にもきっと深く刻まれることでしょう。
映画を観た方も、これから読む方も、この記事が『星の子』という作品をより深く味わうための一助となれば幸いです。ぜひ原作を手に取り、ちひろの心の旅路を追体験してみてください。


