宮部みゆき先生の傑作時代小説を、宮本福助先生が美麗な筆致で描き出す漫画『三島屋変調百物語』。江戸の袋物屋「三島屋」を舞台に、心を閉ざした少女おちかが百物語の聞き手となり、人々の語る不思議な話を通じて少しずつ再生していく物語です。
この記事では、2025年11月現在、全4巻で完結しているコミック版『三島屋変調百物語』のあらすじと結末を、各巻ごとに詳しくネタバレ解説します。物語の核心に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意ください。
【ご注意】
この記事は、漫画『三島屋変調百物語』の第1巻から最終4巻までの重大なネタバレを含みます。作品をこれから楽しみたい方は、閲覧にご注意ください。
『三島屋変調百物語』とは?作品の基本情報
江戸・神田にある袋物屋「三島屋」には、「黒白の間」と呼ばれる一室があります。そこでは、訪れた客が胸に秘めた不思議な話、恐ろしい話、悲しい話を「語り捨て」ていくという風習がありました。主人公は、ある事件がきっかけで心を閉ざし、江戸の叔父夫婦のもとに身を寄せた17歳の少女・おちか。
彼女は叔父の伊兵衛に頼まれ、この百物語の聞き手を務めることになります。「語り捨て、聞き捨て」を唯一のルールに、おちかはただ静かに、客たちの物語に耳を傾けます。語られる怪異譚は、やがて彼女自身の凍てついた心を少しずつ溶かしていくのでした。
原作は宮部みゆき先生による大人気時代小説シリーズ。漫画版は宮本福助先生が作画を担当し、原作の持つ不気味で切ない空気感を、見事な画力で再現しています。
コミック『三島屋変調百物語』はどこで読める?
漫画『三島屋変調百物語』は、電子書籍サイト「コミックシーモア」で全4巻が配信中です。各巻の発売日は以下の通りです。
- 第1巻:2023年6月7日
- 第2巻:2024年1月6日
- 第3巻:2024年6月7日
- 第4巻:2025年2月6日
コミックシーモアでは、お得なキャンペーンや無料試し読みも充実しています。物語の雰囲気を知りたい方は、まず試し読みから始めてみてはいかがでしょうか。
【ネタバレ】漫画『三島屋変調百物語』1巻から4巻までのあらすじ
ここからは、コミック版『三島屋変調百物語』の各巻のあらすじを、物語の核心に触れるネタバレを含めてご紹介します。
1巻のあらすじとネタバレ|聞き手の始まりと最初の物語
【要点まとめ】心を閉ざしたおちかが聞き手となり、最初の語り部を迎える。怪異の奥に潜む人間の業が描かれる導入部。
三島屋に身を寄せ、心を閉ざして日々を過ごすおちか。彼女のもとに、叔父・伊兵衛が「百物語の聞き手」という役目を与えます。最初の語り手として現れたのは、藤乃と名乗る美しい女性。彼女が語り始めたのは、幼い頃に体験した「曼珠沙華の咲き乱れる屋敷」の怪異譚でした。
その屋敷では、決して入ってはならない座敷があり、そこには恐ろしい何かがいると噂されていました。好奇心から禁忌を破った子供たちが体験する恐怖。しかし、物語の核心は、怪異そのものではなく、それにまつわる人々の嫉妬や後悔、そして取り返しのつかない過ちでした。藤乃の話を聞き終えたおちかは、語り手の心の痛みに触れ、自身の忌まわしい過去の記憶と静かに向き合い始めます。
2巻のあらすじとネタバレ|凶宅と邪恋が心を揺さぶる
【要点まとめ】語られる物語がおちかの日常に影響を与え始める。人間の強い情念が引き起こす悲劇が描かれる。
2巻では、「凶宅」「邪恋」といった、より人間の業が色濃く反映された物語が語られます。ある家に住み着くと必ず不幸が訪れるという「凶宅」の話は、家そのものに怨念が宿っているのか、それとも住む人間の心が凶事を呼び寄せるのか、という問いを投げかけます。
また、歪んだ恋心が引き起こす悲劇を描く「邪恋」では、登場人物の激しい情念がおちかの心を強く揺さぶります。聞き手として様々な物語に触れるうち、おちかは自分の感情が動くのを止められません。聞いた話の余韻が、彼女の日常に影を落とし、閉ざしていたはずの心に小さな波紋を広げていきます。
3巻のあらすじとネタバレ|深まる物語と人々の繋がり
【要点まとめ】多彩な怪異譚が語られ、三島屋を取り巻く人々のドラマが深まる。視覚的な表現が冴えわたる。
3巻になると、語られる物語の幅がさらに広がります。滑稽な話、物悲しい話、そして背筋が凍るほど恐ろしい話。様々な語り手が「黒白の間」を訪れ、それぞれの人生の一片をおちかに託していきます。
聞き手と語り手の間に生まれる不思議な絆や、三島屋の人々の温かさが、物語に深みを与えます。宮本福助先生の作画も冴えわたり、原作の巧みな情景描写が、怪しくも美しいビジュアルとして表現されます。怪異の不気味さと、根底に流れる人情の温かさの対比が、読者を引き込んでやみません。
4巻(最終巻)のあらすじと結末|「三鬼」とおちかの選択
【要点まとめ】圧巻の表題作「三鬼」を収録。おちかは自身の過去と向き合い、大きな一歩を踏み出す。物語は一つの区切りへ。
コミック版の最終巻となる4巻の中心となるのは、表題作でもある「三鬼」。山陰の小さな村を舞台に、村を支配する旧家と、貧しさの中で生きる村人たちの間で起きた、数十年にわたる罪の告白が語られます。
飢えと絶望が生んだ三匹の鬼。その正体とは? 語り手の重い告白は、おちかに「聞くこと」の本当の意味と責任を突きつけます。多くの物語を聞き、人々の心の闇と光に触れたおちかは、ついに自身の過去と向き合う決意を固めます。彼女が下した選択とは…。
物語はここで一つの美しい区切りを迎えますが、それは決して終わりではありません。おちかの人生が再び動き出す予感を残し、静かな希望の光の中で幕を閉じます。その結末は、ぜひご自身の目で見届けてください。
物語の深層を探る|キャラクターとテーマ解説
おちかの成長と再生の物語
本作の主軸は、主人公おちかの心の成長です。最初はただ受け身で話を聞くだけだった彼女が、次第に語り手の痛みに寄り添い、その魂の叫びを受け止める「能動的な聞き手」へと変化していきます。他者の物語を聞くことが、結果的に自分自身を癒し、再生させる力となる。この過程こそが『三島屋変調百物語』最大の魅力です。
「語り捨て、聞き捨て」が持つ意味
三島屋のルール「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」。これは、語り手が誰にも言えなかった秘密を安心して打ち明けられるための結界です。黒白の間は、罪を告白し、魂を浄化する一種の聖域として機能しています。このルールがあるからこそ、恐ろしくも切ない、人間の真実の物語が語られるのです。
怪異とは「人の心」の写し鏡
本作で語られる怪異は、単なる超常現象ではありません。そのほとんどが、人間の後悔、嫉妬、愛情、罪悪感といった強い感情が生み出したものです。恐ろしいのは幽霊や妖怪ではなく、人間の心の闇。宮部みゆき先生が描くのは、怪異というフィルターを通して人間の本質を浮き彫りにする、極上のヒューマンドラマなのです。
『三島屋変調百物語』に関するよくある質問
Q1: 原作と漫画はどちらから読むべき?
A1: どちらから読んでも楽しめますが、まずは漫画版から入るのがおすすめです。物語の雰囲気を掴みやすく、全4巻でコンパクトにまとまっているため、シリーズの導入として最適です。漫画で作品の世界観に魅了されたら、より詳細な心理描写が楽しめる原作小説に進むと、さらに深く物語を味わうことができます。
Q2: コミック版は原作小説のどこまでをカバーしている?
A2: コミック版全4巻は、原作小説シリーズの初期の物語(『おそろし』『あんじゅう』など)から、特に人気の高いエピソードを選りすぐって漫画化したものです。原作シリーズはその後も続いており、おちかの成長や新たな登場人物たちの物語が描かれています。
Q3: コミックの続きは読める?
A3: 2025年11月現在、宮本福助先生によるコミック版は4巻で完結となっています。コミック版の続きの物語を読みたい方は、ぜひ宮部みゆき先生の原作小説シリーズを手に取ってみてください。三島屋の物語は、まだまだ続いています。
まとめ:怪異と人情が織りなす極上の物語をあなたに
漫画『三島屋変調百物語』は、ただ怖いだけの怪談集ではありません。語られる一つひとつの物語に、人間の弱さ、愛おしさ、そして生きていくことの切なさが詰まっています。心を閉ざした少女おちかが、人々の話を聞くことで再生していく姿は、きっとあなたの心にも温かい光を灯してくれるはずです。
コミック版は全4巻で完結しており、シリーズの入門編としても非常に読みやすくなっています。江戸の風情と、じんわりと心に染みる物語を体験してみませんか?
気になった方は、ぜひコミックシーモアで無料の試し読みから、その奥深い世界に触れてみてください。


