帝が猫猫を自分の妃にしたいと言い、壬氏が即座に断る。十五巻はこの場面が中心にあります。
壬氏が「断る」という行為の重さを、読みながらじわじわ感じる場面です。帝の意向に逆らうということが、宮廷でどういう意味を持つか。それをわかったうえで、壬氏は強く、明確に拒絶します。
帝が猫猫を妃にしたいと言う
帝が阿多・壬氏・猫猫の三人を呼び、猫猫を自分の妃の一人にしたいと提案します。
「え?」となる場面です。猫猫を帝が気に入っていること自体は以前から伏線があったとも言える。しかし改めて言葉にされると話が大きくなります。壬氏は即座に断ります。「猫猫への感情」だけではなく、帝の意向に逆らっても猫猫を守るという、今後どう生きるかの宣言でもあります。
そしてこの場面で、阿多が涙を流します。壬氏を実の子のように育ててきた阿多が、壬氏が誰かのために本気で動く姿を見て何を感じたのか。台詞は多くない。泣いた、ということだけで十分に伝わる。この作品が感情を語らせない場面ほど印象に残るのは、ずっとそうです。
帝が壬氏を諦める
壬氏の拒絶を受けて、帝はついに壬氏に帝位を継がせることを諦めます。
長いこと宮廷の中に「壬氏が皇帝になる可能性」が漂っていました。本人がどれだけ拒んでも、帝が意向を持ち続ける限りその可能性はゼロにならない。十五巻でそれが正式に消えます。壬氏は皇帝にならなくていい、と決まった巻です。
猫猫が壬氏に「ならないでくださいね」と言います。短い言葉ですが、猫猫が壬氏との未来を具体的に想像しているからこそ出てくる言葉です。十四巻で結婚を合理的に考え始めた猫猫が、十五巻でこう言う。少しずつ前に進んでいます。
帝の緊急手術
十五巻のもう一つの柱が、帝の虫垂炎の穿孔による緊急手術です。執刀するはずだった医師が手を負傷し、次に名前が挙がった天祐は帝への執刀を拒否します。
そこで動いたのが羅門です。膝を悪くしていて長時間の手術には向かない状態なのに、名乗り出る。猫猫が補佐につき、手術が始まります。そして最後の縫合だけ、拒否していた天祐が担当します。
天祐が拒否した理由がまた天祐らしい。皇帝の体は「玉体」と呼ばれるから黄金の血が流れているのかと期待していたら、普通の人間と同じ構造だったので「面白くない、飽きた」というのが理由です。政治的リスクへの恐れでも倫理的な葛藤でもなく、知的好奇心が満たされなかっただけ。そして最後に加わったのは、猫猫が「誰もやらないなら私がやる」と名乗り出たのを見て対抗心から動いた、というものです。医師としての性というより、猫猫への競争心が最後に引っ張り出した、という場面でした。
まとめ
小説版十五巻のネタバレをまとめると、以下のとおりです。
- 玉葉妃の姪にあたる新上級妃が後宮に入り、帝位継承問題が活発化する
- 帝が阿多・壬氏・猫猫の三人を呼び、猫猫を妃にしたいと提案する
- 壬氏が強く拒絶し、阿多が涙を流す
- 帝が壬氏に帝位を継がせることを正式に諦める
- 帝の虫垂炎が穿孔、緊急手術で羅門・猫猫・天祐が対応する
大きなことが静かに決まっていく巻です。壬氏が皇帝にならないと決まり、猫猫が「ならないでくださいね」と言った。十四巻で結婚を合理的に考え始めた猫猫が、十五巻でこういう言葉を言えるようになっている。一巻からの積み重ねを感じます。
